練習問題の解答例を公開

国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義

国語はあらゆる教養の底をなす。
ビジネスパーソンがいま、見直すべき“国語力”とは?

基礎→応用→実践の3部構成で、身につく!

  • 高校教科書を正確に理解する「読む力」
  • 古典的名著から現代の出来事を読み解く「類推する力」
  • ものごとを的確に評価し表現する「思考する力」

基本編

問題①の解答例

ライプニッツのいうモナドとは、世界を成り立たせている、分割不可能な精神的実体である。個々のモナドは外部と交渉することなく、他のモナドを表象しあうことで全宇宙を表象し、調和的な秩序を実現している。
■■(97字)

​<解説>「解答のヒント」として挙げたモナドの4つの特徴をそのまままとめると、指定字数をオーバーしてしまいます。そのため、「ファシズムの正体」 もポイントをしぼってみました。ポイントとなる文章をいかに再構成したか、本文の引用箇所と読み比べてみてください。

問題②の解答例

一八四〇年~六〇年にかけて日本と清は、開港のみならず、領事裁判権や関税自主権のない協定関税制、片務的最恵国待遇などを認める不平等条約を欧米諸国と結んだ。だが、清は敗戦国として、賠償金の支払いや領土の割譲、アヘン貿易の公認、外国人の旅行やキリスト教布教の自由も敗戦国として認めざるをえなかったのに対し、日本が結んだ通商条約は、アヘン貿易やキリスト教の布教の禁止など、日本側の意向も含まれる内容だった。■■(199字)

<解説>本文で述べたとおり、比較のポイントは「項目・観点」を揃えることです。項目を揃えるために、解答例の最後には、日米修好通商条約について引用文では記載されていなかった要素を加えています。​

問題③の解答例

ルネサンスは、中世の教会倫理に疑問を突きつけ、自由な人間性を称揚したが、その影響は貴族階級を中心としたごく一部にとどまり、教会支配が温存されている点では中世的性格が強く残っている。一方、カトリック教会の不正を糾弾した宗教改革の影響は、一般民衆にも及び、国家を原理とする近代社会へ転換するきっかけをつくったが、国家に対して宗教を優位とする点は中世的要素が色濃くあり、近代の出発点にはなりえない。
■■(196字)

<解説>​ルネサンスと宗教改革、それぞれの特徴を200字程度でまとめるのは難しい作業です。そこで、両者が当時の社会におよぼした影響という点にしぼって教科書や参考文献の記述を読み込み、両者の性格の違いを際立たせることで、課題に答えてみました。「近代」の定義については、も参照してください。実践編の第5節(194~201ページ)も参照してください。

応用編

問題④の解答例

労働者は、労働力商品の対価である賃金によって、自らが資本のために生産した商品を生活資料として購入することで、労働力商品の再生産をしなければならないということ。■■(79字)

<解説>​傍線部だけを読んでも何を言わんとしているのかわかりづらいでしょう。しかし、引用部分を冒頭からていねいに読んでいけば、労働者が労働力を商品として再生産するために何が必要なのか、具体的に見えてくるはずです。「解答のヒント」に記した通り、これこそが「資本主義があたかも永続的に回っていく」理由です。​

問題⑤の解答例

知性や意志などの精神活動は、肉体に依存しているということ。
■■(29字)
肉体こそが、知性や意志などの精神活動を規定していること。
■■(28字)

<解説>​本文で述べたとおり、ド・ラ・メトリは徹底した唯物論者であり、彼にとって人間の精神活動はいかに神秘的に見えたとしても、しょせんは肉体という〈物質的な一部分にすぎない〉。それを頭に入れて2つの引用部分を読めば、言わんとしていることは明らかでしょう。​

問題⑥の解答例

「暗い神々」は、ナチズムを含意している。ナチズムのように「先祖の血や土の力」に民族のアイデンティティを求めるような発想を、ゲルナーは誤ったものとして退ける。■■(78字)

<解説>​引用部分を読めば、「暗い神々」がナチズムを想定していることはすぐに理解できるでしょう。 〈先祖の血や土の力が再出現したもの〉としてナショナリズムを捉える理論を、ゲルナーは否定しているわけです。引用部分の後半はわかりづらいかもしれません。補足しておきましょう。ナショナリズムの時代を迎えて、人類ははたして進歩したのか退化したのかというと、おそらく進歩も退化していない。 しかし他の時代の人間と比べて、 〈おそらくより好ましいであろうという若干の証拠はある〉というのはゲルナーが基本的に産業社会に対して肯定的な評価をするのと同じ理屈でしょう。 結論から言うと、より多くの食糧を担保できるようになったので、飢えに苦しんで餓死する可能性を、それ以前の時代と比べるとかなり減らすことができる。多分こういう意識だと思います。​

著者プロフィール

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佐藤 優さとう まさる

1960年、東京都生まれ。作家・元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。現在は、執筆活動に取り組む。『国家の罠』『自壊する帝国』『国家論』『私のマルクス』『世界史の極意』『大国の掟』など多数。