アイスランドで国民的人気の傑作ファンタジー フィリップ・K・ディック特別賞受賞作家の最新作! 「時間」に追われる大人にも、「時間」の大切さがわかりはじめた子どもたちにも 幸せのヒントにであえる物語
イラスト:牧野千穂
世界の始まりの国・パンゲアで、中に入った人間の時間を止める魔法の箱がつくられた。
王様は愛する姫を箱に入れて、いつまでも若く美しいままでいられるようにする。
やがてその箱は王や姫の運命を揺さぶり、世界のあり方を大きく変えることに。
そしてその呪いは、はるか先の現代にまでふりかかることになるのだった……。
時空を超えた壮大な旅を通して、ほんとうの幸せや豊かさに気づかせてくれる1冊。
長引く経済危機にうんざりした人々は、時間を早送りして今をやりすごそうとタイムボックス®を買いに走る。家族で入ったのに、一人箱が開いてしまった少女シグルンは、子どもだけしかいない荒廃した世界で白髪の謎めいた老女に出会う。グレイスはやがて子どもたちに「パンゲア国の王女」の物語を語り始める……。
はるか昔のパンゲア国。長く続いた平和な時代は最愛の妃が出産で命を落とした日から戦いの日々へと転じた。世界を征服し終えてもなお、心が満たされず苛立つ国王に届けられた、時間が止まる不思議な箱。王は妃の忘れ形見である王女を思うあまり、年に1、2度の「かんぺきな日」以外は彼女をそこに閉じ込めてしまう……。
経済危機からいっこうに抜けだせないことにうんざりして、時間を早送りしようとしているのだ。タイムボックス®という、その中だけは時間が止まる不思議な箱に入って、「経済危機が去ったら、ひらく」という設定にし、不況の日々をやりすごす。今、時間を費やして問題に対処するのではなく、だれかがなんとかしてくれるのを箱の中で待ちつづける。ところが、みんなが同じことを考えてタイムボックス®に入ってしまったため、街では人が激減し、経済活動は不活発になる一方で、危機は去らず、箱はいつまでたってもあかない。街はゴーストタウンと化して、しだいに森にのみこまれていく。しかし、何人かの子どもだけは箱から出ることができて、グレイスという謎の老女から、ある物語を聞かされる。遠い昔の、パンゲアという国の物語だ。
立ち止まって考えさせてくれる作品です。
大人から子どもまで幅広く読み継がれるべき作品です!
『タイムボックス(原題 Tímakistan)』が、日本語に翻訳されてNHK出版より刊行されたことを、たいへん嬉しく思います。
『タイムボックス』は2013年にアイスランド文学賞を受賞し、「最もすぐれた児童書」に選ばれています。この作品をもって、日本で出版されたマグナソン氏の著作は四作品となりました。これは快挙であると同時に、日本のみなさんのあいだでアイスランドおよびアイスランド文化に対する関心が高まっていることを如実に示しているように思われます。
マグナソン氏もまた、日本と日本文化を愛好しており、2014年に来日しています。
アイスランドにおいて、アンドリ・スナイル・マグナソンは有名な人気作家です。
小説のほかに、詩、戯曲、短編小説、エッセイ等も発表しており、その作品は様々な言語に翻訳されて、三十か国以上で出版されてきました。
マグナソン氏はまた、政治の分野でも活発に活動していて、持続可能性(サステナビリティ)と環境保護をベースとした価値観を表明しています。
そうした価値観は、彼が作品にこめるメッセージの中核ともなっています。マグナソン氏はわたしたちに、慎重に歩を進め、
世界的な視野に立って自然や天然資源や環境の保護につとめるよう、呼びかけているのです。
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─── 駐日アイスランド大使 ハンネス・ヘイミソン本作で著者は、西洋社会のライフスタイルや価値について問題提起をし、私たちが現状に対して負うべき責任を問うている」